ガラスの風鈴を買った。一週間以上前から欲しいと思っていたもの。
何色にするかしばらく悩んで、音をたしかめ、淡い緑色のものにした。 

 

夜、家の近所で食事をして、

駅まで友達を送っていく途中、古着屋さんのショーウインドウに
ヴィンテージの革のバッグが置いてあるのを見た。

友達を送ったあと、駅からまっすぐ古着屋に引き返す。

夜10時を過ぎていたのに、まだお店は当たり前のように開いていた。

 

たぶん、値段はこのくらい。と思った値段と、500円しか違わなかった。
すぐにレジに持っていくと、化粧が濃くてありえないほど綺麗で、背の高い女の店員さんが
「一目惚れですか?」

と訊くので、
「はい」
と答えた。

 わたしは、欲しいものに対して、わりと容赦がないと思う。
今週のはじめには、金沢に行って、
入った喫茶店で見かけた花瓶がかわいかったので、
翌日またその喫茶店に行き、
「あの花瓶は、どこかで買えますか?」
「どなたの作品ですか?」

と訊いて、取り扱っているギャラリーを教えてもらい、

そこに直行し、在庫がないとわかると、
入荷し次第メールを送ってもらう約束をして帰ってきた。

家に帰ったら、親に買ってきてと頼んでおいた有田焼の蕎麦猪口が届いていた。

ものに対しては、どこまでも、簡単に貪欲になれる。
いくらでも追いかけられるし、

「これはわたしの家にあるべきもの」
「これはわたしのためのもの」
「気に入ってずっと使い続けられるもの」
だと、すぐにわかる。

一瞬だけ考えて、すぐに手を伸ばせる。
手放すときも、ほぼ迷わない。

相手がものでなく、人になると、どうしてただ触りたいだけでも手を伸ばせないんだろう。

ものはぜんぜんこわくないけど、人はこわい。

ものを扱うときに、手が震えたりしたことはない。

 

どんなものでも、手に入れていちばん楽しい瞬間は、

家に帰って包装を解く瞬間だ。

そういうときの自分は、
征服欲とか所有欲に満ちた、

いやらしい顔をしてるんだろうなと思う。