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去年、震災のあと、ageHaに何度か行ってた。
大きなクラブでチャラチャラした人たちをたくさん見たかった。
上品で趣味がいいことなんてどうでもよく思えた時期だった。
ageHaには、バーカウンターのところにポールダンサーが出る日がある。
お酒を買いにフロアから出たら、ちょうどポールダンスが始まるところで、
見ようと思って近づいたら、
わたしの前に、魂を抜かれたような顔をして、食い入るようにポールダンサーを見つめている若い女の子がいた。
若い女の子は、ギャルっぽい感じの子だった。隣にいる業界人ふうのおじさんと一緒に来ていたらしい。
おじさんは、わかったような感じの顔でポールダンスを見ていたのだが、
女の子は、ポールダンスが始まった瞬間にそのおじさんのことなどどうでも良くなってしまったことが、手に取るようにわかった。
すごい目で見ていた。
気持ちがわかりすぎて、抱き合いたかった。その女の子と。
肌を見せる格好をして、色っぽく踊って、
でも男に媚びたりしてなくて、
生まれつきの顔や身体の美しさなんかとはまったく関係ない、
別の次元の美しさを振りまくダンサーが、
どんなに希望を与えてくれるか、
そして、観る側に
「あなたはどんなふうに生きてるの?」
「どういう美しさを、あなたは求め、獲得していくの?」
と問いかけてくるか、
わたしはそういうことを知ってる。
「どうでもいいことなんか今すぐ切り捨ててしまえ。
選びとったものだけが、自分を美しくしてくれるんだ」
そう言われているような気持ちになる。
でも、とか、だって、とか、言い訳は通じない。
それは美しくないから。