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AMBALIというブランドに心を奪われている。
日本にはお店がなく、セレクトショップにときどき入っているのだが、なんとなく服を見ていて、飛び抜けて好きだと思うものを見つけると、タグに「AMBALI」の文字がある。
あまり、ひとつのブランドに入れあげることはないけれど、AMBALIの服はもう二着買ってしまった。
AMBALIの服ばかり買っていたいくらいだ。
もう「今どんな服が必要か」とか「新たに買うべきアイテムはどんなものか」とかを飛び越えて「欲しい」と思ってしまう。
危険な気持ちだ。
こんな気持ちになったことが、何年も前に一度ある。
そのときわたしが夢中になったのは、デザイナーが変わる前のYLANG YLANGだった。
そのとき初めて、家賃より高い服を買った。
現実離れした、素敵な二着のドレスは、今でもわたしのクローゼットの中にある。一着は祖母にリメイクしてもらった姿で、一着はそのままで。
派手で、大胆で、日本でわたしのような生活をしていて、こんな服を着る機会は滅多にない。
最後に着たのは去年の夏のサンセットクルーズだ。
こういうのは、好きなデザイナーにお金を払いたい、という気持ちなんかでは、断じてない。
ただ、その美しいものを手に入れて自分のものにして、独り占めしたいだけだ。
その美しいものを身にまとって、服と同化したいだけ。
その瞬間は官能的だけど、興奮のあまりそれが自分に似合っているかとか、自分をよく見せてくれるかとか、そういうことはきれいさっぱり忘れてしまうことがある。
誰もいない世界で、ただその服をまとうためだけに服を買うということがある。
AMBALIの服は、わたしにとってはわりと現実的で、ちゃんと普段着られるものだけど、
ときどき、着る機会なんてないような、とんでもなく美しい服が欲しいと思うことはいまでもある。