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あっという間に夏がきてしまった。
心に余裕がなくて、新しい服も、新しいサンダルも、水着も浴衣も買っていない。
旅行の予約や、海や花火大会や、そういう予定も立てておらず、
全部したいのに全部はできず、焦るばかり。

打ち合わせと打ち合わせの合間にヘアサロンに駆け込んで、髪を切ってもらっていたら
偶然、神宮のナイターの花火が見えた。 
ああ、こうして、目の前の夏を楽しんだほうがいいな、と
がさがさに疲れた心のままで思って、
腕のよい美容師さんになんとか内面のぼろがわからないように髪をととのえてもらったら、
少しは夏に対する意欲がわいてきた。

遠くに行く時間はとれなくても、
そういえば、よく新宿近辺をうろうろしているのに、
入ったことのない有名なジェラートのお店があった、と思い出して、
待ち合わせまでの空き時間に行ってみた。

大人なので、迷わず3種類盛大にコーンに盛ってもらい、
外を見ながらぼんやりジェラートを舐めた。
はやりものが好きなので、このお店のことは、新宿にできる前から知っていたのに、
入ったことのないまま何年過ぎていたんだろう、
ジェラート大好きなはずなのに。
もしかして、本当はわたしは、はやりものもジェラートも、たいして好きではないのではないか……。 
と、アイデンティティの危機までおとずれそうになりながら、
少しずつ陽が落ちてゆく新宿を見ていると、
いかにも夏の光の加減がなんともいえずいい感じで、
ああ、こういうのいいなぁ、とコーンをかじっていたら、
ワンピースにジェラートがぽとりと落ちた。

ああ……(がっくり)。

 外を見ていると、かっこいい帽子にシンプルなシルバーのピアスを合わせて、
今年のサンダルを履いてる女の子が歩いてる。
わたしも、ゆっくり足に合う、気分に合うサンダルを探したり、
着たことのない服を選んだりしたい。
浴衣は、間に合わなければ来年でもいいし、
水着はもうすこしネットで粘って探してみよう。

夏が好きすぎて、この季節は、一日一日が過ぎていくのが、惜しくてたまらない。
二ヶ月だけしかつきあえないとわかっている相手とつきあっているみたいな、
そんな感じがする。