今月もカードの利用明細が届く。
わたしはこれを開くのがちょっとだけこわい。
金額にビクビクするのも確かだけど、それより、
いつ何を買ったのか、思い出すのがこわい。 

タイミングによっては、二ヶ月ぐらい前の買いものが載っていたりする。
いつ、どこで、何を買ったか、思い出すと、
そのとき自分がどんな気持ちで、なにを求めていて、

それを買ったのか思い出してしまう。

ものを買ったところで、自分が変わるわけではない。
そんなことはもうとうの昔にわかっていても、
もしかしたら、少しくらいは、
気分だけでも変わるんじゃないか。
素敵なものを身につけた自分は素敵になれるんじゃないか。
そんなふうに思い、買っている。
 
欲望を希望に見せかけてものを売るのはファッション業界の定番だけど、

変われるかもしれないと思って買うその行動は、希望に見せかけた欲望なんかではない。
今の自分ではない、誰かになりたいとか、
こんなふうな自分だったら、ひとに受け入れてもらえるかもしれないとか、
そんな気持ちで、
そんなことを思うからには、
自分自身のままで、誰かや何かに拒まれたり、

受け入れてもらえなかったりしたことが、そのときに起こっていることが多い。

そんなことを明細にプリントされた文字から思い出すのは楽しいことではないし、
不快な感じに胸がドキンとする。 
 そんな気持ちで、ときに分不相応な金額の買いものをする自分を、愚かだと思う。

なにかを欲しい、と思う気持ちは、せつないものだ。