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トークイベントでおかざき真里さんに初めて会うことになったので、
作品を再読する。
ほとんどもう読み終えていたのだが、最後に「サプリ」を残していて、
一気に全巻読んだ。

外は霧のような細かい雨が降っていて、こんな日には遠くのビルの影がぼやける。
空気と水の境目が曖昧になっていくようで、
窓からの景色が、作品の中のイメージと同化していく。 

わたしの中には、基準が常にふたつあって、
客観的に良いか悪いかと、もうひとつは自分が個人的に好きか嫌いかという基準だ。
そのふたつは同じではないし、ぜんぜん違う。
「嫌いだけど、すごい作品だ」という評価もあるし「欠点だらけなのはわかっているけど好きだ」という評価もある。

おかざきさんの作品は、そのどちらでもない。
踏み込まれすぎて、自分の中の基準がかき乱されて、
主観がとか客観がとか、そんなことも言えなくなってしまう。
好きか嫌いかさえ言えない。近すぎて、自分の中に入りこみすぎて、
「自分のことは好きか?」と訊かれているような気分にすら、なる。
こんな素敵な素晴らしい作品と、自分が同じであるはずがないのに、
判断ができないし、したくない。

おかざきさんの作品には、魚や水のイメージが頻出するが、
その水にのみこまれて、おぼれて、境界線が曖昧になっていって、
境界線を引きたい気持ちすらなくなっていく。

この水の中であなたに会えたら、と思う。