「ものを書く女とつきあうのは怖いな」

と、言われたことがある。
 去年、本を出してから別の人に、
「で、俺のことはなんて書いたの?」
と訊かれた。
本を読むひとほど、自分のことが書かれるのをおそれるし、読まないひとほど書いて欲しがるのかもしれない。
呪術を信じているひとは呪術をおそれ、信じていないひとは面白がるみたいに。

ものを書く男のことを、怖いとは思わない。
わたしも同じ武器を持っているから。 
でも、自分の知らない武器を持っているひとのことは、やっぱり怖いかもしれない。